作品名BetterbyUs,BetterthanUs.
元ネタ東方Project
公開日2010510
公開場所なし
頒布イベント博麗神社例大祭12
掲載誌つくよみのひかり

何故、こうなったのか

自問しても答えは出なかった。否、それは明確すぎて受け入れられないだけだ。きっと、慕情でも同情ではなく、同調があったのだろう。計画に必要な協調は、後から付いて来ていた。だって、好きなんかじゃあなかった。むしろ警戒心を剥き出しにして、嫌悪感さえ抱いていた。でも、官能という言葉に手足が生えたような女と幾度も体を重ねてはオスとメスの関係に獣咆を上げるのを、私はきっと避けることは出来なかっただろう。

素敵ああっ、素敵よ慧音センセ!

圧倒的なボリュームの乳房を押し潰し銀を紡いだ髪を振り乱して、私のものを受け入れた八意は泣くように私を呼んだ。四つん這いになった八意、私は張り詰めたその尻肉を掌全体で撫で回し、時折叩いてやる。ぱつんぱつんの桃尻は平手によく響くが、それ以上に、叩く度上がる嬌叫の淫らなこと。獣、肉ではなく性を貪る、女。よく肉の付いた腰を掴み、乱暴に引き寄せる。奔放な尻が、私の太腿と下腹部に跳ねた。その弾力は、貧相な体では成し得ぬ極上の煽情。逃がすまいとばかりに、私は奥まで貫いた肉棒を更に押し入れて動かす。擂粉木のように円を描き、ピストンのように突き、一様にならないようバリエーションを以て彼女の内部を掻き混ぜた。彼女は私が望んだ通りにだらしのない喘ぎ声を漏らし、背筋を反らせて震えている。

っんす、すごいのっ、こんな、んっ、こんなに、ヤられちゃってるの、慧音センセが、はじ、めてっなんで?なんで私がシテ欲しいの、わかるのぉっ?!

彼女は枕に顔を突っ込んでその布地を噛み溢れ出す乱れ声を殺そうとするが、それは僅かな時間も抑止にならなかった。きゅうきゅうと蠕動する膣を肉棒で擦ってやると、膣壁のうねりは捻れまでして私のペニスを絞り上げる。幅も厚みも贅沢な肉襞が、無数の舌の如く絡みついてくる。蚯蚓千匹の女壺、堪らない、彼女が私を初めてと喘ぐように私もこんなオンナ、経験したことがなかった。

っは、この淫売が。なんて、貪欲な穴だっ!

むちむちの肉丘に平手をくれる、もう何度もだ。元々真っ白だったそれは今は赤く熟れていた。その赤さは、痛々しさを感じぬこともないが、もう何度も八意と体を重ねている私には、喘ぎ声や蕩け顔と何ら変わらない。私はいいだけ八意のケツをひっぱたいてやる。

はきゅっ、んっだめ、お尻叩かれるの、恥ずかしいっいい歳した女がケツ叩かれてるの、惨めで……スゴく感じるのォっ!

好きなんだろ?こうやって、痛めつけられるのが、好きなんだろこのマゾ女っ!

好き、好き好き好きっでも、慧音センセのは特別よおっ

彼女がぶたれて感じるマゾだからと言って、私がリードを取っているとはとても言えなかった。彼女はその惨めさも痛みも羞恥も、この被虐セックス全て快感に変えて悦しんでいるのだ。それは、私にサディスティックな行為を"させて"いるのであって、私はこの八意の誘いに乗って行為を引き出され、そして快感を与えられてもいるに過ぎないのだ。マゾ豚に成り下がり、私に罵詈雑言を浴びせられ、私が我儘で乱暴なプレイをしていても、このセックスをリードしているのは、八意だった。

一番いいタイミングで、一番欲しいときに、一番痛くしてくれるの、やさしくしてほしいときには飛び切りやさしいのをくれるの慧音センセ、最高っ最高よおっもっとぉ、もっとシテぇっ

八意の台詞は確かであったが、しかし全く同じ言葉を返してやりたいとも思った。だって私が一番責めたいとき、八意は悟ったようにマゾ顔をこれ見よがしに見せつけてきて、その時に責めれば彼女は最高のリアクションで私を悦ばせ、私が少しやりすぎたと思うと気持ちよかったとすかさずフォローが入るのだ。更には私が優しくしたいと思ったときには八意はまるで気が向いた時の猫のように甘えてきて私を受け入れてくれもする。それは私の悦びであるのと同時に、彼女の悦びを満たすものでもあった。

こんなプレイに、しかし無理や譲渡はない。彼女が求めるところと私が求めるところ、まるで魔法のように噛み合って、お互いを高めお互いを満たしていくのだ。世間ではこれを、相性、と呼ぶのだろう。

ほひっ、ほっヒぃぃいいっ深い、深いのっ慧音センセのオチンポ様、的確に私の弱いトコロ責めてっんひどぉしてえっどおして私のイイトコロわかっちゃうのぉおっ

四つん這いにさせられた八意は、膣をみちみちと締めながら、自らもまた腰を振って私の突挿に合わせてくる。奥まで突き入れても、攻めているつもりは半分程度だった。腰を押し出せば八意は下品な声で快感を訴え身を捻って悶絶するが、私の方は、どんなに奥まで挿入しても挿入したりないという焦燥感に襲われていくのだ。もっと深くまで入り込み、新しい粘膜を蹂躙したくて堪らない。この女は、魔性だ。

そしてその魔性は、何も肉欲を謳う場面においてのみではない。八意は情欲に紅潮した頬、潤んだ瞳と緩んだ唇のままに、それを持ち出してきた。

っんね、えっ、慧音センセはどうして私の計画を飲んだの?

っく、は、ぁ?それを、今、お前が言うのか?

これだ、この女が魔性、否、本当に色狂いなのだとわかるのは。セックスを悦しみながら全く別の思考を並行して走らせる様は、彼女の桁外れの明晰を示すと同時に、規格外の猥乱を示すものだった。

お前が仕組んだこと、はっ、っく、メリットもデメリットも、お前が、提示したものだろう、何を今更、……っ

あの計画の提案、勿論私からだったし、私はあなたにとって最良の提案をしたつもりよ。あぁんっセンセ、今、私喋って、あんっで、でも、正直不安はあったのよ?元々、正義感が強くて頑固な人だって聞いていたから。提案を飲まないどころか、断罪しようとするんじゃないかなんて思っていたもの。……やっぱり、あの子を救いたかったから?

八意の人質は、つまり、妹紅だった。同時に、私の人質はある意味では輝夜姫だった。お互いに、人質を取り合いながら、利害を満たし合う関係。肉欲も、それに。

それは、お互い様だ

性欲で熱くなった感情と、分析の過ぎる冷たさ。この女の絶頂は肉体の反応そのものまでが全て、演技なのではないかとさえ思う。

ええ。私だって姫のことでお世話になったわ。お互い様は、承知してる。でも、私達の行動は、いわば必要悪だった。ね、そうでしょ?

自分の悪行を正当化さえするこの女を、私は空寒く感じていた。そして、その誘いに乗って加担してしまったことに、後悔も。いや、後悔とは少し違う、ただの後ろめたさだ。罪悪感も犯した行為の割には薄い。それはこの女との情交で薄めているような、気がした。

ね、続き

勝手に中断しておいて勝手に続きをねだってくる、身勝手過ぎるがしかし抗えなかった。

八意が体位を変える、今度は八意が私に馬乗りになった。入り口の締め付けをククっと強め、背筋を反らせて腰を震わせてくる。先端が、奥でこりりとしたものに触れると、途端にじゅわりと熱い汁気が溢れ出す。彼女が私の手をクリトリスへぐいぐいと押し付けてくるので、小指先サイズにもなったクリトリスを指の先で左右に小刻みに擦る。八意は頭をがくがく揺らしながら寄り目を細めて歯を食いしばっている。口の端から涎が垂れて声にならない喘ぎを上げてぶるり、体を震わせて私に倒れ込んできた。

……っふんっふ、イイっ……きもちいひ……

喜悦を鳴きながら甘えた猫のようにすり寄ってくる。震えながら小さく舌を出して頬ずりする八意のそれは完熟、だというのにわずかの酸味を含んだ噎せ返るほどの色香。表情は蕩けた熟牝でありながら、少女のような青臭さを密めている。鼻につく熟れた牝汁の匂い。またこの女を犯したくて堪らなくなる。それはひたすらにカラダ、ココロなどない。セックスが慕情の延長上にあるなんて脆弱な神話だと、この女の前では思い知らされてしまう。

こ、こんなに求めたまま感じさせてもらっちゃうと、愛されてるって、思ってしまいそう

っ、は、気持ち悪い。私はお前の恋人じゃ、ないんだぞ。そういうのはそういう相手にやれ。

あーあ、つれないのね

八意の非難が聞こえたが知らぬ振りをする。

……そして、話を"それ"に戻してきた。だから、だからお前は可愛げのない女なのだ!

ね、ね、あなたは、藤原の娘を救いたかったのでしょ?私は輝夜を救いたかった。この行く末を見守るのが、私とあなただけであるということ以外、全く何の思い残すこともないわ。お互いの行いに対してお互いが秘密鍵となって、千年守ればそれで完成よ。歴史を語る全ての人間が、私達の証人になる。

情事の蕩けだった筈の八意の上目遣いが、急に悪事企みの三白眼。千年後を見据えた計画、この女は。

八意の提案と受諾、情事への発展と糜爛の日々。このセックスが口封じの色仕掛けの類ということではしかし、なかった。八意とのセックスに籠絡の意図などないのは、相手をしている私が一番分かっている。八意は、ただのニンフォマニアだ。ただ本当に体行為としてのセックスが好きなのだ……私も言えたクチではないが。

私の腕に体全体で絡みつくようにしてくる八意。彼女の提案を、当初は呑む心算なんか無かった。あんなことを口走るとはさすが流刑者なのだと思ったものだが、だがしかし思い直したのだ。八意の真意を考え、私が目を逸らし続けた旨を考慮に入れ、そして自らも悪事に手を染めるなら、私と八意のほんの少しの苦い思いで、誰もにとって望ましい結果を得られると思い至ったから。

慧音センセのおかげで、計画通り、だものね

阿倍キトラ、大伴みゆき、石上朝臣、志摩まさとの四人は全て葬った。富士の煙は天へ登ることなく娘の口へと運ばれ、生けど生きぬ、死せど死なぬ、焼けど燃えぬ真の蓬莱人、藤原不死人は恙なく生み出された。五人の貴公子を引提げて、かくして歴史は"竹取物語"と銘打ってまこと美しく改竄されたのだ。

千年後には、津々浦々皆誰もが諳んじるお伽話として広まって、私達の行為にぴたりとふたをしてくれることでしょう。暴かれたときには歴史は成熟し、悪事は悪事でなくなっている。ねえ、"岩笠サン"?

お前も、紅に染まれ

あの時、月の者へ化けて"奪わせるために"薬を運んでいた私を、どんと崖から突き落とした妹紅の顔を、私は永劫忘れることが出来ないだろう。あの目、激情を通り越して静謐に至っていた、あの光沢のない瞳。人を殺すことを目的の一歩としか思っていない冷たい目。……ああ、私も、そうか。

あの時の妹紅の顔、あれは修羅だ。修羅の貌だ。彼女を包む紅は、炎か、血か、両方か。

私は、妹紅を救いたかった。良かれと思ってそうした筈だったが、どこかで間違えてしまったのか。あんな風に、妹紅をするつもりは、なかったのに。

いや、そんなことはない。千年先には覆る。輝夜姫はきっと、永遠の命もきっと、妹紅の救いになるだろう

八意の言う通りそれは私の見立てにも間違いはなく、これを罪悪感と言うのなら、それは今だけ感じる刹那の痛みである筈だ。「痛み」。私が妹紅の変貌を見て感じるこの摩擦を痛みというのなら、おそらく八意も今は。

八意が輝夜姫のことをどう考えているのか、そんなこと、私の知ったことではなかった、はずなのに。その疑いを持ってしまったが最後、私のどこかと八意のどこかが繋がってしまったような気がして、凄まじい後悔が襲ってきた。八意の計画にのって、私は、どこかに行きたかったのか?

八意。お前は、何がしたいんだ

……セックス、他の誰とでもないわ、慧音センセとの

周到に練り上げられた、時間そのものをトリックとする密室計画。色仕掛けにしては余りにも隙だらけの情事。この女の明晰は私には到底計り知れるものではなかったし、この女の淫乱は私には到底鎮め切れるものではなかった。

八意と私が恋人同士やそれに並ぶ甘い関係でないということもまた、事実だ。

……一人でヨガッてるんじゃないぞ、雌豚

んっヒおヲ慧音センセの手、乱暴で、好きぃっ

今だって、八意に対して慕情はない。ただ、二人で成した些細な、だが重要な罪科について、信用がおけるというだけだ。そして性行為についても、遠慮も打算も要らない。これが、慕情によってつながる関係なら、こんな我儘を通し合えるセックスにはならないだろう。相手のことを思いやらない、好きじゃないからこそ出来る無遠慮な交わりが、男性器と女性器が凹凸噛み合うのよりも合致を見せるから。妹紅は不死になって以来自らを「生と死の概念を超えたことで、より純粋な人間に近付いた」と称している。ならば私達はきっと、恋人よりも健全で完全なセックスをしているに違いないのだ。

あァっ、ひィいいぃいいっんヲォっんずんって、ずんずんって、クるぅっ慧音センセの打ち上げ花火欲しいって、子宮がずくずくになってるのぉっであった最初は利害駆け引き、の、心算だったの、に、今は違うのめろめろなのカラダが慧音センセに、夢中っ

言葉が面倒臭くなって、私はもう、八意に腰を打ち付けることに没頭していた。八意も、そうなのかも知れない。私も、こいつも、堕落しているか。

は。お前のこれと、あの計画は、っはぁっ、すっかり別物、だ。八意、お前の冴え過ぎる頭では、理性を溶かす程の獣性なんか得られまいよ。色キチガイっ、そう、どんなに色狂いに堕ちても、っは、お、お前は冷えきった頭でベストの演算結果を弾き出し、こうして、股を濡らしながらでもそれを実行する。そうだろう?あ、し、しまっ、る

そんなことないわっ慧音センセのおちんぽ、本当に、生まれて初めて心の底……おナカの底にぴったりなのっセンセもわかるでしょ?私の中に入れた時、隙間なくおちんちんとおまんこの肉がぴっちりにくっつくの、少ひ動くらけでもうぞうぞ感じひゃうのこんなの、こんらの初めてだもの逆らぇにゃいわっみもこころも、けいねせんせで、いっぱいなのぉっ

八意は科白の途中から激しく腰を振りだし、表情を崩して呂律を縺れさせていたが、だというのに猥語を並べながら口の端から垂れたのは涎ではなく、またしても灰色の思考回路らしかった。

……ねえ、ねえ、慧音センセ、

八意の表情は時折どこか物憂げ、心ここにあらずといった様子は白痴美じみた色香になるというのに、それでも淫語と交渉を並列してくるのだ。

私とこうなっ、んって、後悔している?

八意は、腰を振りながら問いかけてきた。肉体関係のことについて聞いているのか?しかし、この女についてはそうとは限らないのだ、もしかするとそれはこの計画前後の状況に置かれて彼女が聞いて欲しかったことなのかもしれない。今に至って私がそれを聞くことは、今更出来はしないが。代わりに、意地の悪い言葉を、投げかける。

お前、っは、輝夜姫への感情を、後悔とか慕情とか、一言で言い表せるのかっ?

一言で、言い表せない感情。それは妹紅に対してもそうかもしれないし、もしかしたら今は、目の前の八意に対してもそうかも知れなかった。

八意は答えない。ただ、腰を振って私のペニスを貪りながら嬌態に狂い、時折私に視線をくれる。目は、伏せられていた。

お前の淫乱は、仮面、だな

私が仮面と評したことに目を細めた八意は、代わりに、また私の引き出しを無理やりこじ開けるような質問で返してきた。

ねえ、よかったら聞かせて頂戴な。あなたは藤原の娘にどうなって欲しくて、薬を飲むに至らせたのか……くぅんっ

お前、なっ……カラダで籠絡するなら、もう少しうまく、ヤれっ……ああっ、この贅肉便器、人間にしておくのが勿体ないっな

籠絡なんてそんなつもり、ないものぉ。それよりねえ、私、えっち豚の方が似合ってる?いいわ、慧音センセの前でだけ、えっち豚でいいっ

言葉の前後が一致しない、この女の性コミュニケーション。頭が切れ過ぎるのか、それとも、根っから狂っているのか。

私は八意に呆れ溜息の枕詞を置いてから、まだ自分の中でもまとまっていない、とりとめのない思いを摘まむように言葉に直していく。

ああもう。終わるのも終わらせるのも、急ぎ過ぎだと、思ったんだ。聞いてるの、か?

きーてる

絡みに絡みを重ねて糸玉になってしまった事情と情念を、急に解いて説明するのは難しい。私が言葉を並べ始めると彼女は腰を緩め、私の胸元にすり寄るようにして私の言葉に耳を傾けた。

死ねば終わりとか、殺せば終わりとか、あまりに短絡的過ぎるじゃないか。輝夜姫にしろ、妹紅の父親にしろ、妹紅自身にしろ。それに"永遠が悪だ"なんてステロタイプも、安っぽい。あまりにも手垢まみれで安っぽい思考停止だ。だから妹紅から、彼女の望む救いを永遠に取り去る、彼女を安楽へ導く道を完全に塞いで破壊すること、それだけが、彼女を真に救うことの出来る"最良な"方法だと思ったんだ

私がそういうと、八意は顔を上げた。興奮の紅潮は引いていないが、目の中の光は完全に電子回路のルミネッセンス。

最良?

お前が輝夜姫のために私に五人の貴公子を殺させお伽話を作ろうというなら、私はそれをしようと考えた。きっと輝夜姫にとっても、そうだろう?忌まわしい求婚者がお前の企みで、ずっと語り継がれるお伽話に変わるのなら、いっそ永遠に退けられぬ執念を持って追いかけ続けてくる方が……ああ、何て言えば、適当だろう。うまい言葉が見つからない

八意の腰の動きが止まったことで私はなんとか、いとを解いて言葉に直していく。言葉にすればするほど、言葉になっていく。感情で生きられないつまらない私は、さっさとそうするべきだったのだ。ただ、肝心なところだけ、それだけがなかなかどうして、適切な言葉を選び出せないでいた。言葉とは、なんて不自由な記号。感情も、状況も、思想も理想も、何もかも理論で形成されている言葉では、ガラス一枚のところで手が届かない。私程度の頭では、途中までは容易に表せてもあと一押しが行き止まりになる。

そしてそこでぽつり、八意が言った一言、それがまさに触媒、橙色が欲しくて赤色絵具ばかりをあれもこれもと並べてどうしてもそれに至らないところに与えられた、黄色が、八意の言葉だった。

愉快。

その言葉は余りにも遠慮がなくて。残酷で恣意的で、そして本質だった。

そう、愉快、それだ。愉快だろう、弱みを突いてその逆を嫌がらせのようにしてやったことで、実は冴えた答えに至っているなんて、愉快で仕方がないじゃないか。だからって"死にたいだなんて甘ったれたこと言ってんじゃねえ"ってのは、偽悪趣味が過ぎるかもしれないけどさ。蓬莱の秘薬を使うことをお前は嫌がっていた。それも、いいスパイスだったよ。

そう言った途端、八意はまるで溜め込んでいた鬱憤を晴らすみたいに、笑い出した。

っ、ふふ、あっはははは!そう、そうね。慧音センセ、あなた、だから最高なの!

八意は私にがぶりと抱き付き直して、大笑いで叫んだ。そしてまたキス。性的というより、嬉しそうにいくつも浴びせてきた。私の鼻ほどにある彼女の頭が、鼻孔をくすぐる。可愛い、とは思わなかった。こんな風に、罪を犯して重ねて目的に近づこうだなんて悪党のやり方を、愉快と言って私を誘惑しこんな風に大笑いで受け入れるなんて、まともな人間のものではない。この女は、悪人だ。可愛いとは思えない、だが、美しいと、思った。

先生とか呼ばれるくせに、大した悪党。惚れ直しちゃった

お前は秘薬を使うことに罪悪感を抱いていると思ったんだが。そんな風に笑われるなんて、思っていなかった。私はもっと辛い選択を強いたつもりだったのに、お前には敵わないな

罪悪感なら感じているわよ、もう二度とこの薬は作るまいと思っていた。でも慧音センセ、あなたは私にそれを覆させたの、だから悪党だと言ったのよ。私が最後目を背けていた詰めの一手を、見事に剥きだして私の前に突き付けた。望みを奪い去ることが救いですって?とんだ悪党じゃない。おまけに秘薬を藤原の娘に与えるなんて。でも私はそれを選択せざるを得ない、そうするのがベストだと、あなたが言ったから。痛快なのよ、まるで上手を取られた私自身が!

この女、やはりどこか狂っている。否、整い過ぎているのだ。自分さえ客観視して、より良い結果に従った苦しい選択を受け入れることに慣れ過ぎている。何て明晰、そして、なんて悲しいのだろう。

お前は

もっと感情で生きてもいいのではないのか。その言葉を、呑んだ。苦々しく、どこかで八意に同情にも似た感情を抱きながらいると当の八意は、再開、と言わんばかりにまた絡みついて腰をくねらせてきた、裏筋が肉ビラに擦れヌメる。

おいっ……また、ああ、もう、お前にとってはセックスも殺人も、変りはしないのだろうなっ!っ、誰にでも股を開いて涎垂らしてるんだろう?

そんなことないっ、そんなことないの慧音センセのちんぽ、頭が真っ白になるのはじめてなの、こんなの最初は、ごめんなさい、最初はそのつもりだったけど、負けちゃったの、このちんぽに負けて、ああっすっご、い

今でも、丸め込もうとしてるんだろっ、この、交尾用の肉付き、色キチガイがっ!

んっあ、アヒっ……お、奥が、おくが、ぐりぐりっ……やだ、それ子宮が、欲しがりになっちゃうだめなの、やっぱりそのおちんぽ私、だめ、耐えらんないっ気持ちよすぎる、慧音センセはそうじゃないのかも、しれない、けどぉっ、私には、おっホオオォォオオっ私には、最高のおちんぽなのっこんなになにされてもヨワいの、はじめ、ってっ

お前みたいな肉塊の方が、初めて、だっ

ほんとう?ほんとうっ?うれしいっでも、でも慧音センセ、あなたこそ本当は今まで、何人もこのおちんぽで女を泣かせてきたのでしょう?こんなえげつない、凶悪ちんぽっ太くて、エラが高くって、反り返りがキツくて、子宮口と臍の裏っかわ、ずっとがつがつしてくるなんて、無理よぉっおっ、オッんっきもちっいヒぃっ降りちゃうの、子宮、バルーン来て降りちゃうのっがっつんがっつんして欲しくて、子宮がエッチに素直になっちゃうっ

だったら、狂え、よっ狂って見せろよ、快楽依存症の月の頭脳さんよっほっら、ほうらっ!こうやって、穴をオナホみたいに乱暴にがっつかれるのが、好きなんだろ!?淫乱!ドスケベ!月の子宮がっ!

アヒっんっ、ぅぅんっおっごヒ……ちんぽ、ちんぽちんぽちんぽぉっしゅっごしゅぎりゅぅんそうね、きっとそう、何人ものおまんこが、食い物にされてきたのね藤原の娘も、稗田の娘も、みんなあなたに……ぁぁんでも仕方ないの、こんなの、こんな素敵なおちんぽ様じゃ、牝は逆らえないものぉっ

そんなんじゃ、ないっ……ああ、八意、もう、イきそうだっく、ぁい、イクっでる、ぞ、出るぞ八意っ

堪えた末に弾けた射精、精液は八意の下腹部めがけて飛沫を上げ、一部は私にもかかる。八意は抜けたペニスの裏側でクリトリスを擦って、絶頂を突き破る。

い、イクっ慧音センセのイキ顔見ながら、私も、クリチンズリして私もっキた、おっきいのぞわぞわって、キたあ子宮の底からじくじくきもちい波、あ、っ、あっ、あああっイクの、イク、イクイクイクっ……イクぅ~~っ

白目を絶頂に揺らし背筋を反らせてわずかな時間硬直、すぐに弛緩し仰向けに横たわって力ない腕で抱き付いてくる八意。体は痙攣を繰り返し、たまに大きな跳躍。八意の顔が近い。

こんな風に一緒に絶頂出来る体の相性も、私と八意を結び付ける重要な要素。それに絶頂の波の高さも、八意の体を相手にしたときは他の女の(あるいは男の)比ではなかった。オーガズムの波が意識をさらって押し流すことも少なくない。今も火花の様に意識は明滅していた。意識の寸断に伴って、体中の力が抜ける。すかさず八意の腕が、私の頭を抱いた。

中にくれても、大丈夫なのに

まっぴら、だ

私が体全体で息をしながら八意の上で切れ切れの答えをすると、私の頭を抱きかかえたままの八意は、ちぇ、と言いながら子供に笑いかけるような顔で私を見た。

中に出さないことが避妊になるとは思っていない。だが、私が最後の瞬間を八意の中で迎えないことで、何か最後の一線を守っているような感覚でいたのだ。信頼しているわけじゃない、愛情があるわけでもない、一歩踏み込まないところが絶対あって、最後絶頂の瞬間を八意の最奥で迎えることにはどうしても抵抗があった。今まで何度も八意とセックスしているけれど、一度も八意の中で射精したことはない。

でも外にぶちまけた量は、自分が恥ずかしくなるくらい。白濁液は八意と私を濡らし、シーツに匂い立つ水溜りを作っていた。

……気持ちよく、イけた?

シーツの洗濯は私がするから

よかった、八意は私の頭を一層強く抱いて嬉しそうに言った。お前はどうなんだと聞きたい不安にかられたが、それを口にするのは情けなくてやめた。

水飴でも舐める子供のように、私の腹に散った精液を、飽きもせず啜っている。

好きものが

ええ、

照れ隠しのつもりでそう悪態をついてやると、撃ち返されてしまった。

好きよ

§

私の家ではないのに、もうコーヒーの淹れ方も、道具や豆の在り処も、全部知っている。生気のなさそうな実験室を兼ねたこの部屋にもんもんと籠る生活臭は、こういったものの散見による。つまり、たとえば、加熱処理をするバーナー、バーナーの火を受ける金網、フラスコとそれを塞ぐゴム栓、ガラス管を延長するゴム管、漏斗と濾紙。それら実験器具で即席作り上げたコーヒーサイフォンが、出番の多さゆえにそのまま運用されている。地球にはまだない道具たちが織り成す光景は、異世界じみた不思議なものだ。

昨日もまたいつもみたいに飽きもせずセックスしていた。こうしてこの部屋で寝落ち、目覚めにこのエキゾチックな光景を目にするのももう慣れっきりだ。

私が起き上がるのも億劫のまま横たわっていると、八意はくるりと顔を向けて口を開いた。もういい加減わかる。苦いばかりで甘くもない会話を、またしようというのだ。私はひょいと体をよけて起き上がり、コーヒーを淹れにベッドを立った。

最初は一口だって飲めなかったそれを、今は思い切り甘くすれば飲めるようになった。情事の熱が引いた後の寂寞、事後の朝寝の目覚めに、なるほどこの苦味は染み入るような、安堵がある。

薬缶を火にかけ、豆を挽き、フィルターを広げる私の背中に、八意の言葉が降ってきた。

ひとつ、昔話をあげる。五つも人殺しをしてもらった、お釣り。それに歴史改竄の先払い

いらねえよ、言おうと思ったが八意の顔を振り返ってそれを噤んだ。聞いて、欲しそうだったのだ。掴み処の無い、どこを聞いてどう信用すればいいのかわからない秘密主義の女が、だ。この期に及んでもはや私に何かを聞かせることが何らかの罠である筈もない。私は、八意の真意を愚痴か、願いか、懺悔か、いずれにせよ何らかの本音を、吐き出されるのだろうと感じた。

私は淹れたコーヒーに一口だけ口をつけてから。

聞いてるよ。

彼女の方を見る。意地の悪い、言い方だったかもしれない。ただ、それを受け取った八意の口が、a、i、a、o、と動いたのを私は、コーヒーのカップに視線を落として見なかった振りをした。

その視線を負ってきた八意が、一口頂戴、と私のコーヒーに口をつけ、瞬間、あっま、と顔をしかめた。私が逆をされたときに苦くて顔をしかめるのと同じ。だってこれは彼女に飲ませるつもりのものではなく、自分のためだけに淹れたものなのだ。八意と私は、何もかも、そうしているのだから。八意は、後で自分の分を淹れて口直ししなくちゃ、と呟いてから話を続けた。

輝夜は元から、死神に嫌われていたの。月で、あの子は皇女だから昔からそれだけであの子を生かそうとする輩と殺そうとする輩が群がっていたわ。何度か殺されかけたこともあったけれど、全て生き延びてきた。何度死ぬような目にあっても、まるで刃が輝夜の方を避けるみたいにね。あれの代わりに死んだり傷ついた子もいるわ。それ位、皇帝の跡目争いは残虐で陰湿、憎悪の連鎖を厭わない苛烈なものなの。血で血を洗うなんてそんな馬鹿はしない、血は必ず真新しい白で綺麗に塗り潰すものよ。輝夜はね、藤原の娘の目にはどう映っているかはわからないけれど、根は優しくて大人しい子でね。そんな生活に疲れていたのね。犠牲さえ払って何度も危険を乗り越えてきた、その挙句に"こんな生活嫌だ死にたい"なんてね、私によくぼやいていたわ。私、そんな輝夜に何て言ったと思う?

私は答えなかった。まさか。そんな出来過ぎた話があるのかと思いながら。そして八意は私の沈黙を、すっかり掬い取っていた。コーヒーはもう二度目、誤魔化すために視線を投げる聖域ではなくなっている。

何も言わないけどあの子、私を恨んでいるかもしれないわね

いつも気怠げで息の多い声色が、一層に濁る。私は何も答えることが出来ない。同じことを私もしようとしているのだ、同じ感情に私も沈もうとしているのだ。二人絡み合う計画によって、同類、いや、なんという言葉で表現するのがいい、これを。

八意を妙な目で見てしまっていたかもしれない。気が付くと、苦笑いにはにかみを混ぜたような、それにどことなく子供を愛でるような目で、八意は私を見ていた。

な、なんだ

私が視線に問い返すと、八意はくすりと目を細める。

あなたを共犯者に選んで、よかった

そう言って私を見る八意の目は、今までで一番、嬉しそうで、やさしかった。

そうか、共犯者、か。

私は彼女がそう表現したのを、ほんの少し、いいな、と思った。

§

八意をベッドに押し付けて、唇を指先で撫でる。八意はぱくりと私の指を食んで、甘噛みし始めた。舌先で指の腹、爪の脇をなぞってくる。彼女の口を犯すのとは逆の手は、上向いた乳房をまさぐった。しっとり張りのある胸のはもう、自己主張している。潰すくらいにシてやると、それを合図に指フェラは深くねっとり甘ったるく変わる。心なしか唾液も粘り気が増して一層いやらしい。「舌、性感帯なの」と言う彼女にとって指フェラは十分セックスなのらしい。両手で私の手を掴んで、口を大きく開けて指を咥え、唇を窄めて吸い、指の先から股まで全部を舌で舐り尽くしてくる。指が性感帯ではない私でも、普段人から触られることのない場所を唾液まみれに嘗め回される感触は、快感神経を静電気で撫でまわされるようでぞくぞくする。しかもそうするとき八意の美貌は崩れて無様な牝になるのだ。指フェラの光景は、股間からポジションが動かない生尺とはまた違った征服感があった。

我慢、出来ない。ね、欲しいの、早く

八意は立ち上がって、上半身を起こしたままの私の前に股間を晒す。陰部の濡れ方はまるで風呂上がり。匂いに酸味はなく、こもったような生々しい牝臭。八意は両手を使って綻んだ肉ビラを摘まみ広げた。淫液をべっとりと含んだ陰毛は束になって肌に貼り付いていて、口を開いた淫裂を遮るものは何もない。

くねり、と八意の水気に富んだ肉薔薇が腰ごと揺れた。それだけで、はらりと蜜が滴りそうなこの有様、いやらしいを通り越し、品性下劣を更に通り過ぎて、やはり狂うほど淫ら。左右に摘まみ開かれた牝唇の奥で、折り重なるような肉厚のヌメ襞がゆらゆらと蠢いている。あの一枚一枚が、別々にペニスを舐め回してあっという間に男精を搾り取る魔の肉ビラ。この入り組んだ肉筒に挿入し、思うままにコスる快感は、私のカラダが憶えている。ぞくり、腰の奥から細波を立てて全身へ広がる快感期待。

今日は、ねえ、ヘンなの。どうしようもなく堪え性がなくって、慧音センセにがっつん、がっつん、されるの、欲しくて欲しくて何も考えられない……。性的ストレスすごいのっ。ねえ、ねえっ、お願い、もう挿入れて、挿入れてぇっ

こんなのは初めてだ。むしろいつもは私が我慢出来ずに「やん慧音センセったら、せっかち」と言われるのに、今日はなんだか、八意がしおらしい。先日の、計画がどうのこうの言う甘くもないピロートークが思い出された。

おねがい

だがその表情は、発情の熱に浮かされた焦燥に一握のあいを混ぜた、彩度の低い青。分析の冷徹も、今は温いか。

どうしたんだ、聞くのも野暮に思えて私は彼女の腕を取ってぐいと引き寄せかき抱いた。黙って抱いてやるのが甲斐性だと、思った。

言葉はなく、お互いの体を貪り抱く手をいっとき忍ぶように、誰かに密めるように、しずか。

私の頭のすぐ横に、やはり八意の頭がある。こめかみ同士が当たり、髪の毛がさりさりと音をならすのが、相手の"そこにいる"として直接響いてくる。艶めかしくくねる白い背筋ばかりが目に入るここからでは、真横にある八意の表情は知れない。ただ、荒く熱い吐息と、声にもならない嬌めいた音が、エロティシズムの原記号として耳から注がれていた。何故か急に、私は八意が、八意は私が、今こうして隣にいることを確かめたくなって。触れるこめかみを更に寄せて、頬同士をくっつける。八意の体温。首筋に腕を回して自分と八意の首を括り結ぶみたいに。

互いの心鼓が重なって不規則ビート、二人の息遣いが混じって変則リズム。決して、整わない。私達はきっと、求め合っても重なり合っても、ずれたまま。そういう出会いでもなければ、そういう付き合いでもないのだから。

せんせい、セックス、して。カラダだけだって、ちゃんと思い知らせて?

それは、私に勘違いの進行を思い知らせようと言う言葉か、それとも。

問い質すのは怖くて、でも輪郭はもうくっきりとし始めている。だからこそ、八意が絞り出した声に、私の興奮は一気に沸騰を迎えた。

体を捻って倒れ込み、八意の両肩を押さえるようにして組み敷く。覗き込んだその顔はいつもの妖女のそれではなく、少女のようなかんばせ。顔の作りではなく、表情。噎せ返る程の色気に、恥じらいが一滴、落ちて揺れているのだ。それは、カラダだけ、という科白とまるで一致しない。何故、今更それなのだろう。

考えるのは、避けた。わかってしまいそうなのも怖かったし、それを彼女がどう思うのか、今一つ踏み込む勇気もない。押し倒した彼女の唇を吸って、自分を誤魔化した。お互いに興奮を高め合うのも慣れたもので、こんなとこだけ息ぴったり、そう、こういうことに違いなかった。

……四つん這いになって、尻をこっちに向けろ

精一杯意地悪そうに言ったつもりだったが、きっと失敗していたに違いない。

目を細める八意。上半身は左腕で抱いた枕に投げ出されて豊満すぎる乳房はそれと肉厚を競い合って弾けていることだろう。ただ尻を向けるだけじゃない、股は下品に大きく開かれており、ボリュームのある陰毛がふっくら茂っている、更にその下から伸ばされた右手が、熱帯雨林をかき分けた奥にある底なしの肉沼をくつろげて見せつけてきた。人差し指と薬指で器用に左右に広げたと思うと、中指は中央で解れる柔穴に刺さりこんでいる。その中指はまるで別の生き物、八意の秘部をゆっくりともみほぐして奥まで潜っていく。押し込まれた媚肉は奥へ巻き込まれ、柔らかさを殊更に強調する。そして引き抜かれるときに指にねっとりと絡みつく粘液は、てらてらと鈍い光を返した。指を締め付けて一緒に引っ張り出されて盛り上がるヌメ襞壁。爪先が抜けそうになるまで引き出されると、またゆっくりと奥へ挿入。私はその小さな花に吸い寄せられるように膝立になって、腰を掴み寄せた。

乱暴なのが、いい

いつも、乱暴にしてるつもりなんだがな

うそばっかり。慧音センセ、やさしいもん

後悔させてやるよ

私は数度八意の濡れそぼった入口を竿で撫で、先端を申し訳程度に濡らしてから、一気に奥まで押し込んだ。

んっ……あァ~~~~っっ!い、いきなり、なんへぇっ

八意の中はぎちぎちに私のペニスを咥えこみながら、全体でびくびくと震えている。枕に埋もれた顔は半目を上目に投げて焦点を失っていることだろう。性感に浸る時八意が見せるだらしない顔を想像し、肉袋の感触に酔う。八意の腰を掴む手に力が入り、腰を押し出すのと逆のタイミングで思い切り引き寄せる。柔らかいのにキツい、キツいのにどこまでも沈んでいきそうな肉穴に、ペニスしか挿入出来ないのが口惜しい。体全部で、この中に入ってしまいたい。

おっオッんっ!っは、はひぃぃっっ!せ、せんせ、すご、っすごっい激し、すぎッ!あっ、っひ、ひぃぃいっ!んっ、うンンっ奥まで、っすごいの、キてる慧音センセのデカマラっこんな、ズコズコやられたら、おまんこ壊れるっ、女として終わるぅっ

ああっ?いつもいつもそんなこと言って喜んでイキ狂うのはどこの、だれだ、よっ!

お、ゴ……っ、す、っヒっこ、こわれ、るっ私のおなか、ほん、と、こわれるっっア、あっ、んんっけ、ね、センセ、あっぐ、すご、い、ほんろに、すご、ヒあああっ、あ~~~~っもっと、もっろ乱暴、にしへっんっもっろ、もっろおおおぉおっ

っは、アっ八意の、ナカ、すっごい、ぞ絡みついてくる、のにっ、んっヌメってて、うぞうぞうごいてて、ちんぽ、とけ、そうだっヤバい、やっぱこのまんこやばっいッもってかれるちんぽの威厳が、丸裸にされて、根こそぎもっていかれちまうっどろどろきつきつまんこに、発情ちんぽが骨抜きにサれるぅっ!八意、やごころぉっ最高だっおまえのまんこに、私さからえないっお前とちんぽセックス出来るなんてちらつかされたら、人殺しでもなんでもする

っ、っひぃぃぃイいっそのまえにっその前に私っ、わたししんぢゃうっこんな激しいの、センセ、こんな激しいのっ、オ、ぉぉっっほォこんな激しいの、初めて、じゃないぃっっしゅごい、おまんこの壁広がりきって、ピストン摩擦でやけちゃうっ子宮口まで届いてごっつごつつきあげんっだめ、らめぇっ子宮口が攻城受けてるっ私の最後の砦、攻め落とされてあいちゃうっ慧音センセの女殺しのおちんぽさまで、子宮口バカになってウテルス陥入アクメ覚えて子宮の中が性感帯につくりかえられちゃうんだわぁっ

ど、どうなってんだ、よ、このまんこっ膣が、バキュームフェラしてくるみたいですご、すぎるっ吸い込まれる八意、っや、ごころぉっちんぽちんぽたまんない

たかがこんな短い肉の棒と穴の摩擦に、夢中になって我を忘れてしまう。ひと突きごとに八意の腰が打ち上がって膝が浮く。無様な八意の声が、更に興奮を誘ってくる。

お互いに、ただのセックス狂いになるように、私達は卑猥で下劣で、品性に欠ける言葉を相手にも自分にも使って、性行為と性感に没入していく。その波長というか、周波数というか、リズムや勝手な噛み合い、私と八意の好みは、ぴったり一致している。こんな風に自分の性感をさらけ出して一緒に燃え上がれる相手がいるなんて。

粘膜同士の摩擦が繰り広げられる結合部、破滅的な快感をもたらす粘膜撹拌が汁を飛ばし泡立つのは、快感が嵩増し爆ぜている証拠だった。相手を気に掛ける余裕なんかなくて、乳房を握り潰すほどの力で揉んでしまうと、八意はそれにさえも涎混じりに淫猥な悲鳴を上げて膣を締め付けた。

恋をするなら相手は幾らでもいるだろう。愛すべき相手もきっと幾らでも現れるだろう。ただ、こんな風に我儘にセックス出来る相手は、八意以外にはありえないような、気がしていた。どうしようもなく八意とのセックスを求めてしまう感情も、愛情や恋心ではない。ただの、娯楽。快感に酔いしれるだけの、このセックスは娯楽なんだ。

だというのに、八意が体を捻って後背位から正常位になって、彼女の顔がこんなにも近くなっただけで高まる射精感は、何故だろうか。思わずキス、唇から粘度の高い唾液の橋が引いた。八意の表情も、煮詰めた水飴みたいにドロドロに甘ったるい。私もきっとそうなっているのだろう。

センセ、ああっ、私、わたし、すごい、っすごいの、キそうっ子宮下りてきちゃってるのぉっ

八意っ、っくわ、わたし、も、だぁっ精巣ひりあがってるちんぽもキンタマも、精子絞り出す準備運動しちゃってるっ

いよいよ、竿の付け根に突き抜ける感覚が現れた。ぎりぎりまで堪えてから、私はペニスを膣から抜こうとする。中に出しては、たまらない。だが八意は、足を絡めて自ら腰を上げてそれを追いかけてくる。私の首の後ろで組んだ手をぐいと引き寄せて私を離すまいと抱き付いてきた。

だめぇっ

甘ったるい掠れ声を耳元に置いて、浅く細かい息。恐ろしいくらいに私の竿にぴったりの膣は、うねうねと蠢いて精液バキュームの準備中。不規則な窄まり肉リングで竿を亀頭を撫でて締め擦り上げてくる。

ば、ばか、おいっ

いいからっ……お願い

八意の顔を見ると、これまでにない切羽詰まった表情。今まで私を翻弄していた艶女の色香は姿は形を潜め、伏し目がちのまま口付けてきた。ペニスの挿入は深く、そのまま最奥のしこりと鈴口が押し付け合っている。射精寸前に抜くつもりでいたのにそれを阻止されていた。

中に、出して……ね?

は?お、おまえ、そん……っ、く、っ~~~~~っ!もう無理、だっ

その美貌が欲情に溶ける様を見せられ、甘い声で体を絡みつかせ下半身をぎゅうぎゅうと押し付けられる。膣内は緩急予想のつかない締め付け、八意の腰は上下へ動き肉棒は扱きあげられる。この膣は、まさに男根殺しだ。

で、出るっメスブタ八意の汚まんこに、発情ちんぽのドロ汁、出るぞっ絶対出さないって、絶対お前なんかの中じゃ射精しないって決めてたのに、クソ、ぶちまけてやる止まんないからな、一回出たら止められないからな八意のザー飲みまんこ窒息するまで孕み種詰めるからなっどうなんだよ、それでいいのか?

イイっおまんこ、子宮っ、慧音センセの精液タンクになりたがってるのぉ欲しいの、慧音センセの精液っ女堕としの確定妊娠汁欲しいの慧音センセのゼリー状瞬間受精剤、ナカにたっぷり注いでおまんこ壊して

じゃあ受け止めろよ、淫乱豚私ので受精したかったら、もっとやらしいセリフで狂って見せろっっく、あ、っお前のまんこ、貪欲、すぎだっ出すって言った途端、なんて動き方っ……膣壁が、フェラみたいに、んっそ、そんなに、そんなに欲しいのかよ?私のふたなりメスザーメン、欲しいのかよ出すぞ、出すからな、ナカに、いっちばん奥の子宮口にちんぽこすりつけながら、精子ぶちまけるからな!

うんっきて、きてきてっせーし、き……~~~っキ、タぁっ慧音センセの特濃ザーメン、やっとナカにもらえたぁっんっ、す、っご精虫びっちびちあばれてるっこってりザーメンの中で何億匹も私の卵をレイプしようと暴れまわってるはーっはぁっおまんこの中どうなってるか想像しただけでぞくぞくヤバいイキかけまんこにとどめが、アツアツザーメン中出しっ子宮口がぱくぱくしてるの、わかる?膣内も精子ごくごくしちゃってるだめ、だめもう止まんないイク慧音センセのザーメン生出しで私イク~~っぁ、んイクイク、イクイク、イグイクイグイグイグイグぅ~~~っ

淫猥を通り越した色キチガイ声を上げ、才女の美貌が崩れる。八意の繊細な生菓子のような口が、今はだらだらと蜜涎を流すギャップ、そしてそれを征服する悦びと性感の交じった快感によって、興奮は頂点を突きっぱなし。下腹部同士がぴったりとくっつき、陰毛同士が絡み合って陰核にすれるほどに密着して深く突き刺したままの先端から、精液は止め処なかった。吐き出せば応えて喘ぎ声と蕩け顔があらわれ、それは更に射精を促す。精子どころか陰茎ごと奥へと飲み込む膣の動きは、イッて敏感になったペニスにイキ重ねを強いてくる。射精は、私の背骨がそのまま鈴口から抜き取られるかと思うほど強烈。睾丸が空になってもお互いの腰の動き、性器の充血、性欲の高まりは収まらず、愛液吹きと空射精だけのアクメを何度も重ねた。中で出す、というだけで、こんなにも……。

今まで中出しは避けていたのに、ついに、してしまった。それはもしかしたら、彼女への警戒心の薄れの表れだったかもしれない。彼女の脚の絡みを振り払って、抜き去ることはきっと出来たのだ。でも、私はそれをしなかった。体が先行する私と八意の関係、このこともまた体が示す真意かもしれない。

しばらくは、動く気になれなかった。考えるのも嫌だ。しばらく私も八意も荒い呼吸を刻むばかり、声も出せずに息の音だけが部屋に響いていた。

しばらくしてようやく体を起こし、八意を見る。そして私は、すぐさま目を逸らした。彼女はずっと、私を見ていたらしい。

やりすぎ、た?

ぜんぜん、とゆったり笑う八意。何だか、妙に、こそばゆかった。

§

目を覚まし、お互いが既に目を開いているのを認識していながら、言葉を発さないまましばらく居心地の悪い沈黙に内心右往左往していたのを、最初に破ったのは八意だった。

おはよう?

くすりとひとつ笑ってから言ったそれは少しだけ意地悪で、ろうそくの遠火で焙るみたいに、ちいさくちりちり痛い。

おぁよ

額が触れ合うほど近い八意の目を正視出来ずに目を逸らし、言った私はまるで子供のようだったかもしれない。逃げるように視線を投げたその先のサイドテーブルの上で、冷めたコーヒーは黒い面を揺らしている。八意の目が、逃げるような私の背ににやにや笑いの目を投げているのは分かっている。

飲むか?

慧音センセの分を少し貰うわ

渋のついたマグカップを掴んで、ベッドを立った。実験用具サイフォンのバーナーに火をつけようとしたとき、背後から抱き付いてくる八意によろめいた。

おいおい、火を使ってるんだぞ

慧音センセ、今、死んでた

……ああ、そりゃあおっかないな

八意のほっそりした指の先が、私の首元を横一線に撫でていた。

お互い、気をつけないとね。片方が吐いたら芋蔓なんだから。口の数は減らしておくに越したことはないのだもの

簡単にはやられないさ。それに、歴史改竄がまだだ

ちぇ

舌打ちの直後、頬にキス。そのまま後は体をべたべたとくっつけて絡め、八意は私がコーヒーを淹れるのを見ている。勿論、八意には殺意などあるまいし、どうにかしようというつもりも恐らくない。同じように、歴史改竄を盾に何かを要求するつもりもないし、実行を引き延ばすつもりもない。それが私と八意の間で成立する"信用"の形、それはある意味で、悪人同士のケジメのようなものだった。

慧音センセの私塾って、どんなこと教えてるの?元は人間だったとはいえ霊獣が人間社会に溶け込んでいるの、ちょっと見習わないと

私のは、特殊だからな。稗田家の後ろ盾がなかったら、今のような立場にはなっていなかっただろう。

なるほどパトロンがいたのね。うちもいつまでも竹林に現れたお化け屋敷じゃあいけないから、私も塾でも開こうかしら。それとも、慧音センセのところで雇ってくれる?

お前がやりたいというなら、構わんが……

八意はほんとは興味なんかなさそうにして、今度は私が淹れたコーヒーに、砂糖入れすぎ、と唇を尖らせる。本当に、何を考えているのかよくわからない。私はいつまでも、振り回されっぱなしだった。

私のを飲むと言ったからだろう、嫌ならもう一杯つくる

いいわよ、このあっまーいコーヒーで。一口欲しいだけだから。慧音センセって堅物そうなのに酒も煙草もやるし、苦いものが苦手、だなんて、可愛いのねえ

うるさいな。大体、堅物イメージを作っているのは村の人間達だ。あれが私に"真面目で""頼れる"白沢様を望んでいるから

それに応えようってのが堅物だっていうのよ、一人の人間のために五人も人間殺してるってのに、ねえ

この際だから言っておくが、私は"先生"と呼ばれるのは好かないんだ。呼ばせるのは、里で私の目の届く範囲で生活している人間たちだけと決めている。

あら。じゃあ、何て呼べばいいのかしら、慧音センセ?

私は、つい、と一歩踏み出して、まるで欠ける処の無い美貌がするり収束する顎に指をやり、それを掴んで上向かせる。小柄というわけではないが、私よりも少しばかり背は低い。可愛げはないし信用もできないが、美しい女。私は彼女にもう……惹かれていた。

判っているくせに、言ってみろ

好きよ、慧音

余計なのが、ついてる

余計ではないわよ。これから長い付き合いになっていくのだもの

歴史改竄はやらないと言ったらどうする

やるまで待つわ。時間は、無限にあるし。それにもう、あなたもやらざるを得ない。

私と彼女はもはや、共犯者だ。これは恋愛感情なんかじゃない、ただの、利害の一致。だがそれが一致している間は、誰よりも信用出来る。そして恐らく、この利害の一致は、ずれる事がないだろう、永遠に。

強かな女だな

私がそれを言うと、彼女は一瞬意外を前に驚くような顔をしてから、くすり、笑った。

それを言うなら慧音セン……慧音もそうでしょう?互いに背合わせている限りは、望ましい状態を維持出来るのだもの。それを承知で私と関係した、慧音だって充分強かな女だわ、違って?

……違わんか

じゃあ、もういっぺん。彼女は自分の顔を指さして、何かを指示する。

なんだ?

解らないと首を傾げると、彼女は背伸びをしてさす指を一層顔に近づける。その爪先は、唇を指していた。

契約、とびきりやさしいのを、ちょうだい

背伸びをし、腕を伸ばして私の首にかぶり付いてくる。少女というには過熟、だというのにいじらしい乙女のような可愛らしささえある。私は彼女の腰を抱いて、その口を吸おうとしたが、待ってと止められる。何だ我儘な、と顔を離す。

台詞付きで

は?

私はさっき言ったわよ?

勢いで切り抜けてしまえればよかったのに、一旦止められた上に更に注文が重なる。恥ずかしくて、顔が真っ赤に燃えるのが分かった。

け・い・ねえ?

態々羞恥心を煽るような仕草で私を急かす様子に腰が引けてしまう私と同時に、それを苦笑いしながら受け入れられる自分もどこかにいて、私はそいつにバトンタッチすることにした。

好きだよ、永琳

何事か、言葉を返そうとして口を開く彼女のそれを、要らない、という言葉と代えて、塞いでやった。

"すき"。その言葉を、犯罪者同士の合い言葉のように突き合わせる"契約"。言葉への冒涜かも知れない。ほんとの恋心なんかない、あるのは利害の一致と快感、確かにその一致を好くということだけ。それを、慕情と見間違えることはあっても、互いに本気になんかしないから。だってこの口付けの味は、こんなにも

苦い

これのせい?

でも、ちょっと甘い。八意は付け足した。私にとってはこれでも苦すぎるのだが、八意にとってはもうこの苦味は慣れたものなのだろう。

コーヒーの苦味は、セックスの余韻を醒ますのにぴったりだと、知った。だがそれだけではない、通じ合ったかのように感じられる気持ちと、分かち合ったかのように感じられる心地、その全ての錯覚を醒ましてくれる。好きとか恋とか愛とか、そんなものに勘違いしてしまいそうな危うい距離感を、この苦味は呼び止めてくれるものだった。

私を抱く彼女の腕がぎゅうと強くなったので、私も彼女の腰を引く腕を締めてやる。艶めかしい声が彼女の小さい鼻から漏れて、舌の動きにも表れた。また、我慢出来そうにない。恋愛感情を伴わないセックス、利害関係の信用、ふたり。だからこそ。

加熱した吐息を互いに混ぜ合わせながら見つめ合ってから、その場で彼女をもう一度、組み敷いた。唇はとうに重なっている、苦いまま。

計画はきっと巧く行く。私達全員、永遠の最少不幸を実現する、安定した未来を手に入れる。

その為にこそ、私と彼女は、共犯者を誓ったのだ。お互いの想い人を罠にかけて、私と彼女は、きっときっと万事巧く事を成す。

恋人なんかではない、私と彼女は、共犯者なのだ。